04借金があっても大丈夫?生活保護と債務整理の連携

借金があっても大丈夫?生活保護と債務整理の連携

 生活が苦しくなり、生活保護の申請を考えている方の中には、「借金があるから、生活保護は受けられないのでは?」と不安に感じている方も少なくありません。消費者金融からの借入れ、クレジットカードのリボ払い、奨学金、あるいは友人・知人からの借金など、経済的な困窮はしばしば借金問題を併発します。

 しかし、ご安心ください。結論から言えば、借金があっても生活保護は申請できます。 むしろ、生活困窮の大きな原因となる借金問題を解決することは、生活保護による自立支援の重要な一部と捉えられています。

 この記事では、借金がある状況で生活保護を申請する際のポイントと、生活保護制度と債務整理(借金問題の解決手段)がどのように連携していくのかについて、詳しく解説します。

借金があっても生活保護は申請できる!その理由

 生活保護制度は、憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」を営むための最終的なセーフティネットです。この制度は、あくまで現在の生活困窮度を基準に判断されるため、過去の借金の有無が申請の可否を直接的に決定するわけではありません。

 重要なのは、現在のあなたの収入や資産が、国の定める最低生活費を下回っているかどうかです。借金があること自体が生活困窮の大きな要因となるため、福祉事務所もその点を考慮します。

 ただし、生活保護受給中に借金を重ねることは、自立を妨げ、保護費を借金の返済に充てることになるため、原則として認められません。生活保護が決定した後は、新規の借入れは厳しく制限されます。

生活保護と債務整理:なぜ連携が必要なのか

 生活保護の目的は、単に生活費を給付することだけでなく、「自立を助長する」ことです。借金がある状態では、いくら生活費が支給されても、その一部が借金返済に消え、真の生活再建は困難になります。そのため、生活保護と借金問題の解決策である「債務整理」は、密接に連携することが非常に重要です。

 福祉事務所も、生活保護申請者(または受給者)に借金がある場合、その解決に向けて債務整理を促すことが一般的です。これは、受給者が安心して生活を立て直し、将来的な自立を達成するために不可欠なプロセスだからです。

債務整理の種類と生活保護受給者が利用しやすい方法

債務整理には、主に以下の3つの種類があります。

  1. 任意整理(にんいせいり)

    • 裁判所を介さず、債権者(貸金業者など)と直接交渉し、将来利息のカットや返済期間の延長などを求める手続きです。元金は原則として返済しますが、毎月の返済額を軽減できます。

    • 生活保護受給者には不向きな場合が多い: 生活保護費は最低生活を保障するためのものであり、そこから借金返済に充てることは原則として認められません。任意整理で合意した返済額を継続的に支払うことが難しいため、生活保護受給者が利用することは稀です。

  2. 自己破産(じこはさん)

    • 裁判所に申し立てを行い、免責が認められれば、原則として全ての借金の支払い義務が免除される手続きです。

    • 生活保護受給者に最も適した方法: 自己破産は、借金の返済能力がないことを裁判所に認めてもらい、借金をゼロにする制度です。生活保護受給者は、基本的に借金を返済する能力がないと判断されるため、自己破産が最も現実的かつ有効な解決策となります。これにより、借金の重圧から解放され、生活保護費を安心して生活のために使うことができるようになります。

  3. 個人再生(こじんさいせい)

    • 裁判所に申し立てを行い、借金を大幅に減額(原則1/5または100万円まで)してもらい、残りの借金を原則3~5年で分割返済する手続きです。

    • 生活保護受給者には不向き: 任意整理と同様に、減額されたとはいえ、継続的な返済が必要となるため、生活保護費からの返済は原則認められず、利用は難しいでしょう。

債務整理の手続きは誰に相談すればいい?

 生活保護受給者(または申請を検討している方)が債務整理を行う場合、特に自己破産を検討する際には、以下の専門機関・専門家への相談が不可欠です。

  • 弁護士: 債務整理の専門家であり、法的な手続き全般を代理してくれます。複雑なケースや、複数の業者からの借金がある場合も安心して任せられます。

  • 司法書士: 弁護士と同様に債務整理に関する専門家ですが、自己破産の手続きにおいては、書類作成の代理はできますが、裁判所での代理権には制限がある場合があります。

  • 法テラス(日本司法支援センター): 経済的に余裕がない方のために、弁護士や司法書士の費用を立て替えてくれる制度があります。生活保護受給者は、費用が無料になる場合が多いです。まずは、法テラスに相談してみるのが良いでしょう。 

 福祉事務所も、借金問題があることを知ると、法テラスや弁護士・司法書士への相談を促してくれます。連携して対応を進めることが大切です。

まとめ:借金を整理し、新たな生活をスタートする

 借金があるからといって、生活保護を諦める必要はありません。生活保護制度は、借金問題の解決と連携しながら、あなたの生活再建を強力に後押ししてくれる制度です。

 借金問題で悩んでいる方は、一人で抱え込まず、まずは福祉事務所や弁護士・司法書士、そして法テラスなどの専門機関に相談することが大切です。借金を整理し、安心して最低限の生活を送り、自立に向けた新たな一歩を踏み出しましょう。