16生活保護受給中のアルバイトはできる?収入申告の重要性

生活保護受給中のアルバイトはできる?収入申告の重要性

 生活保護制度を利用中の方から、「働きたい」「少しでも生活費の足しにしたい」というご相談をいただくことは少なくありません。結論から申し上げますと、生活保護受給中でもアルバイト(就労)することは可能です。

 ただし、収入を得る際には生活保護制度のルールに従い、いくつかの重要な手続きと注意点を守る必要があります。特に「収入の申告」は、生活保護を適正に受給し続けるために最も重要な手続きです。

アルバイトは可能!「自立助長」が目的の一つ

 生活保護制度の目的には、「自立の助長」が含まれています。働ける能力がある人が就労し、最終的に保護から抜け出す(自立する)ことは、制度の目指すところです。

 そのため、役所(福祉事務所)も、原則として働く意欲を妨げることはありません。体調や能力に合わせて働くことは生活のリズムを整え、精神的な安定にもつながる前向きな行動です。

「控除」と「収入認定」の仕組み

 アルバイトで収入を得た場合、その収入は生活保護費と合わせて生活費をまかなうために充てられます。しかし、収入のすべてが生活保護費から差し引かれるわけではありません。

 生活保護制度には、「勤労控除(きんろうこうじょ)」という仕組みがあり、この制度が働くことへのインセンティブ(意欲)を維持する役割を果たしています。

【 勤労控除とは】
 働いて得た収入から交通費や社会保険料などの実費を差し引いた後、さらに一定の額が「収入として認定されない」控除として差し引かれます。

 これにより、働いて収入を得た方が働かなかった場合よりも手元に残る金額が多くなり、「働いた分だけ得をする」仕組みになっています。

【収入認定の計算の流れ】

 1.総収入(アルバイト代)
 2.非課税枠(基礎控除額)を差し引く
 3.実費控除(交通費、社会保険料など)を差し引く
 4.残った金額から、段階的な控除額を差し引く
 5.最終的に残った金額が「収入として認定される額」となり、その分だけ翌月の生活保護費から差し引かれます。

つまり、アルバイトで収入を得ても、生活保護費がゼロになるわけではなく、手取り額は増加します。

最重要!「収入申告」を絶対に怠らないこと

 アルバイトを始める際、そして収入を得た後に最も重要となるのが福祉事務所への「収入申告」です。

【 申告のタイミングと方法】

 1.就労の開始前: アルバイトを始める前に、必ず担当のケースワーカーにその旨を伝えます。
 2.収入を得た後: 毎月、給与明細などの収入を証明する書類を添えて、速やかに福祉事務所に提出し収入額を申告します。

【 収入申告を怠るとどうなるか】

 収入を申告せずにいると、それは「不正受給」と見なされます。不正受給と判断された場合、以下のような厳しい措置が取られます。

  • 保護費の返還: 不正に受給した全額または一部を一括で返還するよう求められます。
  • 保護の停止・廃止: 生活保護の受給資格自体が停止されたり、廃止されたりする可能性があります。
  • 刑事告発: 悪質なケースでは、詐欺罪として刑事告発される可能性もあります。

 収入申告は、働く意欲を伝えると同時に制度を正しく利用していることの証明にもなります。「少しの収入だから大丈夫だろう」と自己判断せず、必ず申告を行ってください。

まとめ

 生活保護受給中にアルバイトをすることは、自立に向けた素晴らしい一歩です。しかし、実際に収入を得始めると「勤労控除」や「収入認定」の複雑な計算、そしてケースワーカーへの適切な報告・連絡・相談など、制度利用特有の煩雑な手続きが増えてきます。

  • 「どれくらい働くと、手元にいくら残るのか、損をしないか不安」

  • 「収入申告はきちんとできているのか心配」

  • 「役所とのやり取りに自信がない、あるいは負担に感じる」

こうしたお悩みやご不安があれば、どうぞお一人で抱え込まずに『いちかわ行政書士事務所』にご相談ください。