11生活保護受給中の住居と家賃扶助の範囲:行政書士が解説
生活保護受給中の住居と家賃扶助の範囲:行政書士が解説
いちかわ行政書士事務所の代表、市川です。千葉県流山市を拠点に、生活保護申請サポートを含む皆様の生活と権利を守るお手伝いをさせていただいております。
今回は、生活保護を受給されている方、またはこれから申請を検討されている方にとって非常に重要なテーマである「生活保護受給中の住居と家賃扶助の範囲」について詳しく解説します。
1.生活保護制度における「住宅扶助」とは?
生活保護制度は、憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する制度です。その生活を維持するには、住まいが不可欠です。生活保護には8種類の扶助があり、その一つが「住宅扶助」です。
住宅扶助は、生活保護受給者が安定した住居を確保・維持できるよう、家賃や間代、地代、住宅の維持・補修に必要な費用などを国が負担する制度です。一般的に「家賃扶助」と呼ばれるものは、この住宅扶助の一部、特に家賃や間代に充てられる費用を指します。
2.家賃扶助の「基準額」について
住宅扶助では、地域や世帯構成に応じて上限額が定められています。これを「住宅扶助基準額」と呼びます。
この基準額は、厚生労働大臣が定める保護基準によって全国一律に定められているわけではありません。地域の物価水準や住宅事情を考慮して、全国を6つの「級地」に区分し、さらに世帯の人数に応じて上限額が設定されています。例えば、都市部(一級地-1)は基準額が高く、地方(三級地-2)では低めに設定されています。
具体例(あくまで目安です。級地や実際の金額は変動します)
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単身世帯の場合、都市部であれば約40,000円~53,000円程度です。
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2人世帯、3人世帯と人数が増えるごとに基準額も上がります。
ご自身の地域の級地や世帯人数に応じた正確な基準額は、お住まいの地域の福祉事務所で確認できます。また、当事務所にご相談いただければ、適切な情報提供やアドバイスが可能です。
3.家賃扶助でカバーされる範囲
家賃扶助の範囲は、原則として実際に支払っている家賃(または間代、地代)のうち、住宅扶助基準額以内の金額です。
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家賃が基準額以下のケース: 支払っている家賃の全額が支給されます。
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家賃が基準額を超えるケース: 基準額が上限となるため、基準額を超過する部分は自己負担となります。このため、申請前に家賃扶助の基準額を把握し、その範囲内の物件を探すことが非常に重要です。
また、家賃に加えて、敷金、礼金、更新料、共益費(管理費)、火災保険料なども住宅扶助の対象となる場合があります。ただし、これら一時的な費用は別途支給されることが多く、それぞれに上限額や支給要件が定められています。
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敷金・礼金: 転居が必要と認められた場合(例:立ち退き、老朽化、世帯分離など)に限り、基準額の範囲内で支給されることがあります。
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共益費(管理費): 家賃に含めて支給されるか、別途支給されるかは自治体によって運用が異なりますが、対象となる場合があります。
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更新料: 更新時に必要となる場合、基準額の範囲内で支給されることがあります。
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火災保険料: 最低限の保険料であれば支給対象となる場合があります。
4.住居選びの注意点とトラブル回避のために
生活保護受給中に住居を探す際は、いくつかの注意点があります。
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基準額内の物件を探す: 前述の通り、家賃が基準額を超過すると自己負担が発生し、生活を圧迫する可能性があります。事前に福祉事務所で基準額を確認し、その範囲内で物件を探しましょう。不動産会社に生活保護受給中であることを伝え、福祉事務所からの家賃扶助証明書などを見せることで、スムーズな物件探しにつながる場合もあります。
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初期費用の確認: 敷金・礼金、仲介手数料、引越し費用なども、原則として福祉事務所が必要性を認め、かつ基準額の範囲内でなければ支給されません。自己資金がない場合、これらの初期費用が障害となることもありますので、事前に福祉事務所とよく相談することが大切です。
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大家さん・管理会社との関係: 生活保護受給者であることを理由に、入居を断られるケースも残念ながら存在します。しかし、最近では生活保護受給者への理解を示す不動産会社や大家さんも増えています。また、福祉事務所や地域の相談支援機関が物件探しをサポートしてくれることもあります。
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「生活保護専門」を謳う業者への注意: 一部の悪質な業者が、生活保護受給者をターゲットに不当に高額な手数料を請求したり、劣悪な物件を紹介したりするケースが報告されています。不審な点があれば、すぐに福祉事務所や信頼できる行政書士、弁護士などに相談してください。
5.転居に関する手続きと注意点
生活保護受給中に転居を希望する場合、原則として福祉事務所の承認が必要です。
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原則として転居は認められない: 現住居で生活を継続できる場合は、基本的に転居のための費用は支給されません。
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転居が認められるケース: 例外的に、以下のような場合は転居が認められ、住宅扶助が支給される可能性があります。
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立ち退きを命じられた場合
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家屋が老朽化し、危険な状態である場合
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世帯分離や家族の増減により、現在の住居が手狭または広すぎる場合
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病気や障がいにより、現在の住居での生活が困難になった場合
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DV(ドメスティック・バイオレンス)などにより、身の安全の確保が必要な場合
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収入が増加し、住宅扶助が不要となる物件への転居を希望する場合(自立助長のための転居)
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転居の必要性が認められた場合でも、新しい住居の家賃は現在の住居の家賃と同額以下、または新しい住宅扶助基準額の範囲内であることが求められます。
6.困ったときの相談先
生活保護の申請から受給、そしてその後の生活において、住居の問題は非常にデリケートであり、専門的な知識が必要となる場面が多くあります。
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福祉事務所: 最も身近な相談窓口です。担当のケースワーカーが状況に応じたアドバイスをしてくれます。
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行政書士: 行政書士は、生活保護申請の代行や、申請に関するご相談、各種必要書類の作成サポートなど、幅広い支援を提供します。特に、手続きが複雑に感じる方や、福祉事務所とのやり取りに不安がある方は、ぜひご相談ください。
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NPO法人、弁護士: 地域によっては生活困窮者支援を行うNPO法人や、法的トラブルに強い弁護士も相談に乗ってくれます。
まとめ
生活保護制度における住宅扶助は、受給者の安定した生活を支える重要な柱です。家賃扶助の基準額を理解し、その範囲内で適切な住居を選ぶことは、生活の安定につながります。もし、住居や家賃扶助に関して疑問や不安がある場合は、一人で抱え込まず、専門家や関係機関に相談することをお勧めします。
いちかわ行政書士事務所は、皆様が安心して生活を送れるよう、きめ細やかなサポートを提供しています。お困りの際はどうぞお気軽にお問い合わせください。