06生活保護受給中の国民健康保険・国民年金はどうなる?
生活保護受給中の国民健康保険・国民年金はどうなる?
生活保護の申請を検討されている方や、すでに受給中の方にとって、医療や年金といった社会保障制度がどうなるのかは大きな関心事ではないでしょうか。特に、これまで国民健康保険や国民年金を支払ってきた方にとっては、「生活保護を受けると、これらはどうなるのだろう?」という疑問は当然のことです。
今回は、生活保護受給中の国民健康保険と国民年金の取り扱いについて、その基本的な考え方と具体的な仕組みを分かりやすく解説していきます。この情報が、皆様の不安解消の一助となれば幸いです。
生活保護制度と社会保険の関係の基本
まず大前提として、生活保護制度は、憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」を営むための最終的なセーフティネットです。これは、他の公的扶助や社会保障制度を優先的に利用しても、なお最低生活を維持できない場合に適用されます。
この「最終的なセーフティネット」という考え方から、国民健康保険や国民年金といった既存の社会保険制度との関係性が決まってきます。
国民健康保険の取り扱い
生活保護受給中の医療については、「医療扶助」が適用されます。
-
国民健康保険の資格は喪失します: 生活保護が決定し、医療扶助が適用されると、原則として国民健康保険(またはその他の健康保険)の被保険者資格は喪失します。これは、生活保護の医療扶助が、国民健康保険の給付を「補完」するものではなく、「代替」するものだからです。
-
医療費の自己負担は原則なし: 医療扶助が適用されている期間は、病気や怪我の治療にかかる医療費(診察料、薬剤費、治療材料費、手術費、入院費、通院のための移送費など)について、原則として自己負担はありません。
-
「医療券」で受診: 受給者には「医療券」が交付されます。医療機関を受診する際は、この医療券を提示することで、無料で必要な医療サービスを受けることができます。
-
未納分の国民健康保険料: 生活保護受給前の国民健康保険料に未納分がある場合でも、その未納分を生活保護費で支払うことは認められません。未納は免除されるわけではなく、引き続き支払い義務は残りますが、生活保護費からは充当できません。多くの場合は、市町村からの催促は一時的に停止されますが、受給終了後に改めて請求される可能性もあります。この点については、市町村の担当窓口に相談することが重要です。
つまり、生活保護受給中は国民健康保険証ではなく、医療扶助としての医療券を使って医療を受けることになります。これにより、経済的な理由で医療を受けられないという状況を防ぎます。
国民年金の取り扱い
国民年金についても、生活保護受給中は特別な取り扱いとなります。
-
国民年金保険料の免除: 生活保護受給中は、国民年金保険料の支払いが全額免除されます。これは「法定免除」と呼ばれ、国民年金法で定められているものです。別途、市区町村や年金事務所に申請する必要はありません。福祉事務所で生活保護が開始された情報が共有され、自動的に免除手続きが取られます。
-
将来の年金受給への影響:
-
免除期間も年金受給資格期間に算入: 法定免除期間も、老齢基礎年金を受け取るために必要な「受給資格期間」には算入されます。そのため、生活保護受給中に年金受給資格期間が途切れる心配はありません。
-
年金額への影響: 法定免除期間は、将来受け取る年金額の計算においては、保険料を全額納付した場合の2分の1が納付されたものとして扱われます。つまり、全く納付しないよりは将来の年金額が増えますが、全額納付した場合と比べると年金額は少なくなります。
-
追納の可能性: もし経済的に余裕ができた場合、法定免除期間の国民年金保険料は、10年以内であれば後から追納(遡って納付)することが可能です。追納することで、将来の年金額を増やすことができます。
-
-
すでに年金を受給している場合: すでに老齢年金や障害年金、遺族年金などを受給している方が生活保護を申請する場合、その年金収入は生活保護費の収入認定の対象となります。年金額が最低生活費を下回る場合に、その差額が保護費として支給されます。
生活保護受給中の国民年金保険料免除は、年金制度からのセーフティネットと、生活保護制度からのセーフティネットが連携している形と言えます。
なぜこのような仕組みになっているのか
生活保護制度が国民健康保険や国民年金を代替・免除する形になっているのは、以下の理由からです。
-
二重給付の防止: 生活保護は「最低限度の生活を保障する」ための制度であり、国民健康保険料や国民年金保険料を生活保護費から支払わせると、実質的に「二重に保障している」ことになりかねません。
-
負担の軽減: 困窮状態にある受給者が保険料負担でさらに苦しむことがないよう、制度として免除や代替の仕組みを設けています。
-
効率的な運営: 医療扶助として直接医療費を支給する方が、保険料を徴収して保険給付を行うよりも、困窮者にとっては直接的かつ迅速な支援となります。
まとめ:専門家への相談が安心への第一歩
生活保護受給中の国民健康保険や国民年金の取り扱いは、このように制度として明確に定められています。医療費の心配なく医療を受けられ、将来の年金受給資格も維持できる仕組みになっているので、ご安心ください。
しかし、個々のケースにおいては、未納の保険料や、すでに受給している年金の種類、将来の就労状況など、様々な要因が絡み合うことがあります。複雑な状況や疑問を抱えている場合は、一人で悩まず専門家にご相談いただくことが大切です。
いちかわ行政書士事務所は、千葉県流山市を拠点に、生活保護申請に関する専門的な支援を提供しています。生活保護に関する疑問や、国民健康保険・国民年金との関係性について不安があれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。皆様の生活再建に向けた一歩を、親身にサポートさせていただきます。